Q:第3戦ハンガロリンクのレース1から、第5戦のレース1まで、表彰台に上がれないレースが続きました。その間にはメンタル面にもストレスなどの影響はありましたか?

 そうですね。ただ、結果にこだわるというよりは、自分達がやれることを最大限やった結果、何位だったかという考え方で取り組んでいます。表彰台に上がれないということは、それだけ自分たちの実力が足りていないということだと思いますし、まだまだ頑張らなきゃいけない。そういうふうに僕らは捉えているので、それがストレスになるというのはぜんぜんないですね。結果が出ないのは自分達のせいなので。

 だからこそ、もっと頑張らないといけないと強く思います。そういう方向にチーム一丸となって、みんなで前を向いて頑張ろうと取り組んだ結果、3レース後には表彰台に戻ることができたので。そこはチーム全体の考え方、メンタル面の強さというのも出たのかなと思います。ここは結構、レースに取り組む上で大事にしています。

Q:インターナショナルGTオープンでチームメイトを組んだムーラン選手ですが、根本選手や63号車のふたりと比べるとシーズン中、かなり苦戦しているように見えました。

 ムーランは、僕と同じGT3参戦2年目の若いドライバーでしたが、ポテンシャルは高いと思います。レッドブル・リンクの予選だと第2セクターまでは僕と変わらないペースで走っていましたし、速さはあります。ただ、彼は自分の速さを自分で引き出すということに苦しんでいました。そこにどうやったら気づいてもらえるのか、どういうふうに接して、どういうふうに気持ちを持っていったら、僕もチームも彼の速さを引き出す手伝いができるのかと、シーズン中はずっと考えていたましたね。結果、19号車としてはチャンピオンシップは厳しいものになりましたが、その分、僕たちにとって学びの多い1年となりました。

Q:2021年シーズン最大のトピックスは“世界3大耐久レース”のひとつに数えられるスパ24時間レース参戦だと思います。レースレポートでも詳細は語られておりますが、改めていかがでしたか。

 イタリアGTスプリント選手権でチャンピオンになり、インターナショナルGTオープンでも上手くいっているという思いがチーム全体にあり、少しぬるくなっていた中、改めて学びの大切さと貪欲さを忘れてはいけないということを思い起こされたレースだったと思います。

 油断があったということではないのですが、スパに至るまでのレースが比較的上手くいっていたので、「しっかりと自分達の仕事をすれば良い結果につながる」というふうに、ドライバーも、チームも思っていたのですけど、まだまだ上には上がいました。

 ドライバーとしてもイタリアGTやインターナショナルGTオープンのような余裕はまったくなかったです。GT3マシンが60台近くが走る中「常に自分が一番偉い」って思っていないと、すぐに負けてしまうし、走るスペースもない。そういう意味では日本にいては体感できないような、ある意味“世界レベルのレースの怖さ”というものも勉強することができました。

 ただ、それでも「勝負できるな」と感じるところまで、自分の準備ができてきているとも体感できたので、次回も是非出たいレースですね。

Q:初挑戦となったスパ24時間レースはマシントラブルによりリタイアに終わりましたが、FFF Racing Teamといった強豪チームともバトルを展開しました。インターナショナルGTオープンで戦ったライバルたちとはやはり違いがありましたか?

 違いましたね。説明が難しいのですが、僕らのライバル、ターゲットはこのクルマというのはなく、インターナショナルGTオープンでも同様ですが、「自分達が出せる全てを出し切った結果、このくらいの順位になるだろう」という戦い方をしています。ただ、スパ24時間レースの場合は、出せる全てを出し切っても、出し尽くしても上がいるという感じだったので、みんなメンタル面はきつかったと思います。

 ただ、ライバルとの戦い方は正直、変わらなかったです。コースに出てしまえば、自分の前後3台くらいしか目に入りません。なので、目に入るライバルをいかに料理するかというところはインターナショナルGTオープンと変わりませんでした。もちろん、ロングスティントでの戦略やタイヤの使い方などは異なりますが、レースを戦うという点でのメンタリティ自体はそこまで大変ではありませんでした。

Q:レース活動を行う上でヨーロッパとの行き来も多く、さらに2020年シーズンから続くコロナ禍でのヨーロッパへの遠征はより過酷なものだったのではと思うのですが。

 大変でしたし、難しかったですね。コロナ禍でヨーロッパへの飛行機便も少なく、値段も高い。そして、自分だけではなく、周りにいる人たちに迷惑をかけないようにしないといけません。日本の行政の言うことも度々変わるし、行った先で必要書類が変わるとか、この書類では搭乗できませんといったこともありました。

 そこは臨機応変に、強い男としてこなしていく感じでしたね。こういったやりとりもひとりで段取りでき、バイタリティが高くないと海外では戦っていけないなと思いました。マネージャーに全て段取りしてもらい、ドライバーは飛行機に乗るだけ、なんて甘えたことは言ってられない、ということも感じました。

Q:それでは、2022年シーズンに向けた意気込みをお願いします。

 2020年にイタリアGTスプリント選手権でチャンピオンになり、2021年はインターナショナルGTオープンのチームタイトル獲得に貢献でき、ランボルギーニのGT3ドライバーの一員としても、ここから先は速く走るということに責任が生じる仕事が多くなると思います。チームを引っ張っていく立場、ランボルギーニを引っ張っていくひとりになろうとしているので、これまでとは走ることの意味合いが変わってくると感じています。より一層自覚を持って、しっかりと戦いたいと思います。

 実は2022年に出るシリーズについてもすでにサインしています。すごく大きなチャレンジになりますし、日本人としてこういったかたちでレースができることもなかなかないことだとも思います。ランボルギーニ、そして支えてくださるスポンサーの皆さんに感謝しております。

 2021年シーズンはチームメイトが不調に苦しんでいたこともあり、我慢しつつも、自分の経験値を増やす1年となりましたが、2022年シーズンは結果を追い求めていく年になります。レースを楽しみつつ、結果を求めつつ、さらにその先、5年、10年とランボルギーニでレースができるように、2022年は力強く戦いたいと思います。引き続きのご支援、ご声援のほど、よろしくお願い申し上げます!

根本悠生

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