Fanatec GT World Challenge Europe Powered by AWS Endurance Cup Rd.1 Imola

Yuki Nemoto
Fanatec GT World Challenge Europe Powered by AWS Endurance Cup
Rd.1 Imora Race Report

■Introduction

 4月1〜3日、ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・パワード・バイ・AWS・エンデュランスカップ(GTWCEエンデュランスカップ)の2022年シーズン開幕ラウンドとなる第1戦イモラがイタリア北部の街イモラにあるイモラ・サーキットで開催された。

 FIA-GT3規格の車両で競われる世界各地のGT3レースのなかで、もっともハイレベルな戦いが繰り広げられるGTWCEエンデュランスカップ。公式YouTubeではフリー走行からの全セッションが英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語と4カ国語でライブ配信されていることからも、世界各地から多大な注目を集めるシリーズであることが伝わってくる。

 ランボルギーニが展開する若手ドライバー育成プロジェクト『ランボルギーニ GT3 ジュニア・プログラム』のメンバーである根本悠生は、ランボルギーニの育成プログラムの一角を担うイタリアのヴィンツェンツォ・ソスピリ・レーシング(VSR)からGTWCEエンデュランスカップに参戦。新たにミケーレ・ベレッタ、ベンジャミン・ハイツをパートナーに迎え、563号車ランボルギーニ・ウラカン GT3 Evoのステアリングを握り、全51台が参戦する中、18台がエントリーする激戦区のシルバークラスに挑んだ。GT3レースへのフル参戦開始から3年目となる根本は、各自動車メーカーがワークスドライバーを存分に送り込む、世界の大舞台に足を踏み入れる記憶、そして記録に残る一戦を迎えた。

■Qualify:4th(Silver Class)

 現地時間4日午前9時、気温5.7度、路面温度7.9度と4月初頭としては低めのコンディションのもと予選Q1が行われた。GTWCEエンデュランスカップでは3名のドライバーがそれぞれアタックし、3名の記録したベストタイムの平均で決勝のスターティンググリッドが決定される。

 563車のQ1はベレッタが担当し、1分41秒359しクラス7番手につけた。Q2は根本が担当、2度赤旗中断を挟む慌ただしいセッションとなったが、クラス3番手タイムとなる1分40秒983を記録。なお、根本のこのタイムはQ2で記録されたランボルギーニ勢のうち最速タイムとなった。徐々に気温、路温ともに上昇するなか、Q3ではハイツがクラス6番手タイムとなる1分40秒610を記録。3名のタイムの平均により563号車は18台中クラス4番手からのスタートとなった。

YouTube:https://youtu.be/2c7j-znzWzk

■Race:6th(Silver Class)

 ハイツ、ベレッタ、根本の順で決勝に挑む作戦に出た563号車は、全4クラス51台が渾然となるなか、分厚い曇り空のもとクラス4番手から3時間の決勝レースのスタートを迎えた。

 大混戦のスタートのなか、563号車ハイツは11号車アウディにかわされ、クラス5番手で2周目を迎える。そんななか112号車マクラーレンと81号車ポルシェがターン18で接触。2台ともリタイアとなり、スタート早々に1回目のセーフティカー(SC)が導入された。

 6周目にレースは再開。563号車ハイツはマーカス・ヴィンケルホックの66号車アウディに追われる展開となり、10周目にクラス7番手に後退。続いて、背後から迫る14号車ランボルギーニと攻防戦を繰り広げるが、15周目にかわされ、クラス8番手に後退。耐久レースといえど、スプリントレースを思わせるような接近戦が随所で繰り広げられた。

 スタートから40分を経過しようかという21周目、ターン18で77号車ランボルギーニがスピンを喫し、グラベル上にストップ。これでフル・コース・イエロー(FCY)が導入されるが、その直後にSCに切り替えられ、各車のギャップは一気に縮まることに。レースは24周目に2度目のリスタートを迎えた。

 1時間が経過し、各車続々とピットイン。そんななか563号車は1時間2分を経過した33周目に最初のピットイン。セカンドスティント担当のベレッタはトラックリミット警告を受けるギリギリを攻めて35周目、全車が最初のピットストップを終えた時点でポジションを2つ上げクラス6番手まで浮上。昨年のインターナショナルGTオープンのチャンピオンらしい走りを見せつけた。

 563号車ベレッタは、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP/性能調整)でストレートスピードがライバル勢に比べ劣るなか、43周目に777号車メルセデスをパスしてクラス5番手に浮上。しかし、シルバークラスの表彰台争いのレースペースは拮抗しており、3番手のアウディを先頭に5台がほぼ団子状態で周回を重ねた。

 レースも折り返しを経過したところで、97号車アストンマーティンがトラブルでマシンを止めた。これにより2度目のFCYが導入される。その後、FCYは3度目のSCに切り替えられたことで、各車のギャップはまたもや一気に縮まることに。

 58周目に一旦はレース再開が案内されるもその直後、107号車ベントレーが27号車ランボルギーニに追突するまさかのアクシデントが発生。これでSCは延長されることになったが、このアクシデントが563号車の行く末を大きく変えることに。

 SC中の59周目、レース開始から2時間近くが経過し、2度目のピットタイミングを迎えた各車が続々とピットイン。BoPにより燃料搭載量に余裕のないランボルギーニ勢は全車がピットインを先延ばしにする。ライバル勢の多くが59周目、もしくは60周目にピットインを敢行した後、563号車は62周目にピットインを敢行する。

 しかし、ここで予想外の出来事が。それまでスローペースで周回を重ねていたSCがペースを上げて周回。これにより、59周目、60周目にピットを済ませた車両が大きなマージンを得ることに。563号車は、61周目にピットに入ったチームメイトの163号車にも先行されるという状況となり、第3スティントを担当する563号車根本はクラス11番手と、このセーフティカーに翻弄されて6つポジションを下げてコースに復帰することとなった。

 SCは通算30分近く導入され、残り53分を切ったところでレースは再開を迎えた。しかし、再開直後に再びセクター3で複数台が絡むアクシデントが発生。またもFCYから4回目のSC導入となった。レースは68周目に再開を迎えたが、残り時間は45分と、563号車根本に残された挽回の時間はあまりにも短かった。しかし、それでも根本は69周目に56号車ポルシェ、80周目にチームメイトの163号車と次々とかわし、総合27番手クラス7番手までポジションを戻す。

 残り12分弱のところで、563号車根本はクラス6番手を走る31号車アウディを追い詰める。2台はタンブレロ・シケイン立ち上がりでサイド・バイ・サイドとなったが、31号車アウディが幅寄せにも近い挙動を見せ、563号車根本はコース外に弾き出される。これにより、一時順位を落としてしまうが1ポジションダウンでコースに復帰。その後、粘りの走りで再びクラス7番手に返り咲き、2022年シーズン初戦のチェッカーを受けた。

 なお、31号車アウディの行為に対し、最終結果に5秒加算のタイムペナルティが科せられ、563号車ベレッタ、根本、ハイツ組は正式結果で6位へと繰り上げられることとなった。

 これまで挑んだ如何なるレースシリーズよりも激しく、そして高い壁が立ちはだかったファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・パワード・バイ・AWS・エンデュランスカップ初戦。次戦となる第2戦『ポール・リカール1000km』は6月3〜5日にフランス南部、マルセイユ近郊にあるポール・リカール・サーキットで開催される。世界一のGTドライバーを目指し、ヨーロッパで孤軍奮闘を続ける根本悠生の走りに、引き続きご期待いただければ幸いだ。

YouTube:https://youtu.be/1GhBBxUazMk

■根本悠生 コメント

「まず、順位を大きく下げるきっかけとなった2度目のピットインに関して説明させてください。今大会ではランボルギーニに極めて厳しいBoPが科せられました。トップスピードが大きく抑えられただけではなく、搭載できる燃料も厳しく制限されました。その影響で、ランボルギーニ勢は計算上1回のフル給油で最大58分しか走ることができませんでした」

「そのため、58分を前にピットに入ることは絶対にできず、3度目のSC導入中も最後の最後までピットインを我慢しました。ただ、先導するSCにも問題がありました。最初の2周目はかなり遅かったのに、後半の2周はかなりハイスピードで周回していました。後半でピットに入った僕たちはこのSCの影響で大きく順位を失うことになりました。また、チームメイトの163号車が先に2回目のピットに入った理由ですが、163号車は1回目の給油の際に、使用機材のトラブルか、燃料搭載量が予定よりも少なくなるという事態が起きていました。そのため、順位は後方でしたがリタイアという最悪の事態を避けるために163号車から先に2回目のピットインせざる終えない状況でした」

「そうして始まった僕のスティントでは、他クラスの車両も含め、いいオーバーテイクを続けて決めることができました。ただ、終盤にタンブレロの立ち上がりで31号車アウディと並びましたが、立ち上がりのストレートで31号車アウディに幅寄せされるかたちでコース外に弾き出されました。その影響で一旦はチームメイトの163号車の後ろに順位を下げることになりましたが、163号車を再びかわし、そして31号車アウディにペナルティが出されたことで最終的に6位入賞という結果となりました」

「アクシデントもありましたが、ユーズドタイヤで挑んだにもかかわらず、僕自身のペースはすごく良く、クリーンエアの際にはランボルギーニ勢で最も速いペースで走ることができていました。クルマのセットアップも考える限り良い状況でしたし、チームもすごくいい仕事をしてくれたと思います」

「ただ、やはり周回によって走るペースが異なるSCの運用には問題があったと考えています。また、戦略の幅を狭めるどころか、レースを走り切ることが困難なレベルまでに抑えられた燃料搭載上限(BoP)が、とにかく厳しい週末でした。そこを次戦までにランボルギーニとシリーズ運営のSROがしっかりと話し合い、改善してくれることを願うばかりです」

REPORT PDF
日:https://www.yukinemoto.com/report_/pdf/BDL-PR-220404.pdf
英:https://www.yukinemoto.com/en/report/pdf/VSR-2022-GTWCE-Imola.pdf

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