Fanatec GT World Challenge Europe Powered by AWS Endurance Cup Rd.3 Spa-Francorchamps

Yuki Nemoto
Fanatec GT World Challenge Europe Powered by AWS Endurance Cup
Rd.3 Spa-Francorchamps Race Report

■Introduction

 7/27~7/31(日)に根本が今年参戦するファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパの第3戦となるスパ24時間レース(TotalEnergies 24 hours of Spa)が開催された。

 今シーズンは度重なる不運もありGTワールドチャレンジ・ヨーロッパでは思うような結果が出せていない根本。特に前戦のポール・リカールでは決勝レースへの出走が叶わなかったこともあり、今大会にかける想いも強い。また昨年は深夜に発生した車両トラブルによりリタイヤとなってしまったため、今シーズンはまずは完走を目標に戦った。

 今年は欧州各地で記録的な猛暑となっているが、当週末は一転して“スパらしい”肌寒さの中で行われる一戦となった。

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■スパシティパレードが復活

 これまで新型コロナウイルスの感染拡大により中止されていた、スパ24時間では伝統行事となっているシティパレードが今大会では2019年以来3年ぶりに復活。スパ・フランコルシャン・サーキットからスパ中心街に向かう約10kmの公道を、我々GT3のみならずランボルギーニ・スーパートロフェオの車両や往年のGT1マシンなど、計100台以上のレーシングカーが走行した。

 スパの中心部に各車両が到着すると、ロワイヤル広場を中心に全車両が並べられ一般客向けの公開イベントが実施された。特設ステージではベルギー出身の著名ドライバーによるトークショーが実施されるなど、伝統あるレースならではのコンテンツで観客を楽しませた。

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■Qualify : 8th Silver

 現地時間28日20時40分、気温22度、路面温度24.9度というコンディションの中、決勝のスターティンググリッドを決する公式予選が行われた。GTWCEエンデュランスカップでは3名または4名のドライバーがそれぞれアタックし、記録したベストタイムの平均で決勝のスターティンググリッドが決定される。プロクラスは3名での参戦が義務付けられているためこのようなレギュレーションになっているが、このレースでは予選中の給油が認められていないため、4名で参戦しているチームは予選1回分(15分)多く燃料を搭載する必要がある。予選総合結果は平均タイムとなるため、4名で参戦するチームは予選では若干不利な勝負となることもここでご紹介したい。予選で上位20位を獲得すると、その後ポールポジションが決定されるスーパーポールへ進出することとなる。根本が乗る563号車としてはこのスーパーポールへの進出が今回の第一目標となった。

 この予選に挑む前に根本は練習走行の走り出しを担当していたが、今回の24時間に向けてエンジンやトランスミッション、ドライブシャフト等の駆動系をすべて新品に交換しているため、最初の数周は極端に攻めることをせずシステムチェックを行った。また練習走行2回目として行われるプレクオリファイでは右リアタイヤにパンクが発生。新品タイヤを投入した後に発生してしまったため、その後の走行では右リアだけ練習走行1回目で使用したタイヤを使用することとなってしまった。一輪だけ使い古したタイヤを履いたことにより不自然なオーバーステアが随所で発生してしまうことになったため、正しいセットアップ変更が行えているかどうかの判断が非常に難しい状況での走行となってしまった。これにより予選では若干のディスアドバンテージを抱えた状態で参戦することとなった。

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 肝心の予選では新品タイヤでの走行機会の少なさ、そしてパンクによりテストプログラムの変更を余儀なくされてしまった影響もあり、4名すべてのドライバーが予選で苦戦することになる。目標はスーパーポール進出であったが、タイヤの作動ウィンドウを思うように掴めなかったことによるハードブレーキング時の挙動の不安定さやコーナー出口のトラクション不足などを練習走行から改善しきれず、ドライバー陣にも細かいミスが見受けられた。最終的には総合1位の車両から1.536秒遅れの総合32番手、シルバークラス8番手を獲得するにとどまり、悔いの残る結果となってしまった。決勝でのペースを考慮するとトラブルなく予選を迎えられていれば順当にトップ20位は獲得できていたと推測できることから、来年の挑戦に期待したい。

YouTube:LIVE | Qualifying | TotalEnergies 24 Hours of Spa (English)

■Race : 8th Silver – 今大会はトラックリミットに注意が必要

 第74回トタルエナジーズ・スパ24時間・レース、根本にとって2回目となる決勝。スタートはチームメイトのベレッタ選手が担当した。今回根本は主に夜間~明け方のスティントを担当予定だったため、スタート前から一度宿泊するホテルへ戻り仮眠を取るなど昨年以上に周到な準備を行った。昨年は参戦一年目ということもありスタートから数時間は興奮が覚めず中々眠れない状態が続いていたが、今年はその経験を踏まえ身体面・精神面のコントロールができるようトレーニングを重ねてきた結果、より余裕をもってレースに集中することができた。

 今回563号車は基本的には全員1時間×2スティントというダブルスティントを中心とした戦略をとっており、スタートを担当したベレッタ選手はこれを順調にこなす。続いて担当した、今回のスパ24時間へ4人目のドライバーとして起用されたカロル・バッシュ選手の走行中に他車との接触が発生。Les Fagnesコーナーで7号車インセプション・レーシングと交錯し、左フロントを大きく破損してしまう。幸いにもダメージはエアロを中心としたもので、走行自体に大きな問題はなかったことからチームはピットインによる修復をせず継続して走行することを決めた。

 もう一つこのレースのキーポイントとなっているのが、走路外走行によるタイムペナルティだ。昨年仮導入された3Dカメラによる走路(ホワイトライン)確認システムが今年より本格導入。またコースマーシャルによる走路外走行の報告をいち早くドライバーに知らせるため、数秒のディレイはあるものの走路外走行をしたことを知らせる表示モニターが車内に設置されている。今大会では走路外走行を3回行うと次のピットストップ時に+5秒間静止するというタイムペナルティが課せられる。4回目で計10秒、5回目で計15秒と加算されていき、最大45秒間の静止が課せられる。それでも継続して違反をするとドライブスルーペナルティとなるため、今大会ではいかに走路外走行をせず、コンサバティブ且つ良いペースで走行するかが上位進出のカギとなった。

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■ピットイン用の車内ライトに照らされながらの夜間走行

 ベレッタ選手、バッシュ選手そしてハイツ選手3名のダブルスティントを経ていよいよ根本が走行開始。この時根本はいきなりの夜間走行となったため高い集中力と適応能力が試される状況だったが、ピットアウト後にも関わらず、車内を照らすライトが消えずオンの状態のままになるトラブルが発生。ステアリングラックの奥からドライバーを照らすLEDライトを含めかなりの明るさで照らされており、ドライバーの精神力を削ぎ落す結果となった。2時間のスティントを終え再びベレッタ選手へ交代するところでこのトラブルは解消し、引き続きレースを続けていく。  ここで根本は通常のプランでは3時間ほど睡眠を取り次のダブルスティントに備える予定だったが、トラックリミットのカウント数を考慮し監督が再び根本を投入することを決意。レースペースでの強さ、そしてトラックリミットを一切行わないコンサバティブな走りが評価され、ペナルティを回避するために再びダブルスティントをこなすことに。その後も他のドライバーへ長い休憩を与えつつスティントの繋ぐ役割を担った。

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 更にこのタイミングで車両セットアップに対する評価を行い、チーム側とコミュニケーションを取りながらレース後半に向けたセットアップ変更内容を決めていく。これは今大会が24時間というエンデュランスレースということもあり、全チーム最低一度は4分間のテクニカルストップを実施するというレギュレーションになっていることがポイントだ。

 本来はブレーキディスク及びパッドの交換に時間を使うための時間だが、基本的なセットアップ変更であればこの時間内に行えるのである。これは当然チーム力が必要であり、メカニックによる日頃からの練習の賜物ということをここでご紹介しておく。  根本はここでリアの不安定さを指摘。フロントタイヤのグリップが高く、それにリアタイヤのグリップが付いてくることができず結果オーバーステアが発生してしまっていたのだ。チームはここでリアの車高を含む複数のセットアップを変更。これにより、後半はかなりバランスの取れた動きを手に入れることができた。根本のコメントによりセットアップの方向性、変更量が確定されることから非常に責任のある役割だったが、これを問題なくこなすことができたのは今後に向けた大きな自信に繋がった。

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■レース後半にまさかの接触 トラブルも重なり順位を落とす

 夜間走行を無事に終え順調に準備を上げていった563号車。一時は上位20番手に食い込むなどその力強さを存分に見せていたが、レース後半、根本の最後のスティント時に二度目の接触が発生してしまう。188号車ガレージ59がブランシモン手前で大クラッシュをしてしまったことで導入されたFCYの際にピットインしここで上手く順位を上げることに成功。前方4番手を走る90号車マッドパンダ・モータースポーツを3台前方に置いてリスタートとなった。根本はニュータイヤでリスタートを切ったこともあり、順調に2台を1周目にオーバーテイクすることに成功。90号車へのアタックを開始した。

 数周後方に留まりオーバーテイクのチャンスを伺うが、序盤に発生した接触によるエアロへのダメージの影響か、ストレートスピードが伸びずコーナーで追いつくも中々活路を見出せずにいた。根本はそれでもプレッシャーを与え続け、1コーナーでインに飛び込むことに成功。ブレーキング勝負でサイドバイサイドに持ち込むも、根本の位置を上手く把握できていなかったのか、必要以上にインサイドに切り込まれてしまい、接触。根本はここでサスペンションアームの一部を損傷。一度ピットインし、先のダメージと合わせて修復作業を行うことになった。

 当該インシデントについては90号車に責任があると裁定が下り、10秒のタイムペナルティが課せられた。裁定としては相手のミスだったと評価がされたが、ここで大きく順位を落とすこととなってしまった事実は変わらない。オーバーテイクに至った過程やブレーキング勝負の際のポジショニングなどを改めて振り返り今後に繋げていく。

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■昨年の雪辱を晴らし無事完走、来年は文字通り優勝を狙う

 ゴール直前に電装系のマイナートラブルが発生しピットアウトできないというトラブルが発生し再びピットボックスに車両を入れることになってしまったが、こちらはすぐに原因を突き止め再スタート。その後はトラックリミット違反もなく順調に走行を続けたハイツ選手が無事チェッカーを受け、総合35位、シルバークラス8位で24時間レースの幕を閉じた。

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YouTube:PART 1 | TotalEnergies 24 Hours of Spa 2022 (English) Replay

YouTube:LIVE | Part 2 | Car 7 Onboard | TotalEnergies 24 Hours of Spa 2022

■根本悠生 コメント

 「昨年と比較して精神面・身体面で大きな進歩を感じた一戦でした。24時間レースは良い走りを見せることはもちろん必要ですが、走っていない時間にどう体を休めるか、チームをサポートするかも非常に重要だと考えています。その点で昨年以上にリラックスしてレースに臨めたこと、自分をしっかりコントロールして戦えたことは大きな進歩だったと思います。それにより各スティントにて安定した信頼感のあるパフォーマンスを発揮することができました」

 「その一方でレース後半に発生した90号車との接触は不必要なリスクを取ってしまったと反省しています。現実的な目標として表彰台を目指していた中で、残り時間も考えてこのチャンスを逃す訳にはいかなかったと思う反面、相手にペナルティが出たとは言え事実上そこで我々の表彰台へのチャレンジは終わってしまったということでチームに申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 「GT3にステップアップして初めての接触はあったものの、それ以外の場面では求められた仕事をしっかりこなすことができた週末だったと思います。レースペースの強さ、セットアップ変更についてのコメントの正確性、そしてチームメンバーへのバックグラウンドでのサポート等々、良い戦い方ができたと思います」

REPORT PDF
日:https://www.yukinemoto.com/report_/pdf/BDL-PR-220808.pdf
英:https://www.yukinemoto.com/en/report/pdf/220808-VSR-GTWCE-Rd3.pdf

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