■Race:1st

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 2時間の決勝は直前にサーキットへ降り注いだ雨の影響で、ウェットタイヤかドライタイヤのどちらか正しい方をスタートタイヤとして選択しなければならないという難しい状況に。エドアルド選手はレコンサンスラップで路面状況を再確認し、ドライタイヤを選択。結果的にメルセデスの2台を除く全車がスリックタイヤを装着してレースが開始されることとなった。

 実は今大会、決勝前にまさかの事態がエドアルド選手を襲っていた。前日に行われた予選後に急性腰痛症を発症してしまったのだ。これにより経ち続けることすらままならない状況に陥っていたが、今大会は不運なことにミケーレ選手が不在のため、どうしても1スティントはエドアルド選手が走行する必要がある。急性腰痛症を抱えたまま迅速なドライバー交代を行うことはリスクが高いという判断から、エドアルド選手をスタートドライバーとし、レギュレーション上で許される最小スティント(30分)を担当させることとなった。これにより根本はその後の90分間をたった一人で走り抜くこととなり、フィジカル面で大きなチャレンジとなった。

 週末を通して初のウェット宣言が出されたため、レースはセーフティーカー先導のままスタート。タイヤが十分に温まった2周後にレースがスタートすると、エドアルド選手は腰の痛みから十分なブレーキ踏力を掛けることができず、1コーナーで果敢にチャレンジを仕掛けてきた63号車のハイツ選手に対して順位を失ってしまう。続く第2シケインに向かうストレートで圧倒的なスピードを持つ55号車NSXにオーバーテイクされると、シケインの立ち上がりではレインタイヤを装着した17号車のメルセデスに前を行かれ、オープニングラップを4番手で終えた。

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 本来のペースを発揮しきれないエドアルド選手はその後も徐々に前方の車両との差が広がってしまい、防戦一方という展開に。12周目にはペースの伸びない44号車と19号車をまとめてオーバーテイクしようとした20号車に押し出される形で1コーナーを飛び出してしまう。そのまま6号車にも前を行かれ、7番手まで順位を落とした。

 快調なペースでトップを行く55号車からは30秒以上もの遅れをとったが、何とかマシンをコース上に留めてくれたエドアルド選手。予定していた30分のスティントを終えるとすぐにピットイン、根本へとドライバー交代を行った。

 クルマを受け継いだ根本は新品タイヤのメリットを存分に活用しつつ猛追を開始。残り90分あるとはいえ、トップからは約30秒遅れをとってしまっているため、1秒のロスも許されない状況となった。まだサーキット上にはところどころ濡れている場所があったが、過去のレースでの経験も活かし順当に前方の車両との差を縮めていった。全車のピットストップが完了し、総合4番手まで順位を回復していた根本は27周目に3番手を走行していたチームメイトの66号車を1コーナーでオーバーテイク。表彰台圏内へ上がったところで、GTカップクラスの332号車がクラッシュ。車両回収のためにセーフティーカーが導入され、これまであった差が一気に無くなり、優勝の可能性が現実的なものとなった。

 31周目にリスタートとなったが、2番手を走行する63号車のミケロット選手との間にいた2台のカップカーとプロアマクラスを戦う99号車NSXが再スタートで失速。トップグループと大きく差が開いた状態でのリスタートとなってしまう。このままタイムを失うわけにはいかない根本は、なんと第一ヘアピンで3台まとめてのオーバーテイクに成功。最小限のタイムロスでトラフィックを処理し、ミケロット選手に追いつくべく猛追を開始した。

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 レースが後半に入ると、トップ二台が激しいバトルを展開する間にファステストラップを連発しながら追い上げる。トラフィックを処理しミケロット選手の真後ろに迫ると、55号車がピットインし前方が開けたミケロット選手もペースアップし根本と1秒差をキープしながら付かず離れずの展開に。二度目のピットウィンドウが開くと、66号車を駆るコーラ選手がまずピットイン。マッティア選手と根本はどちらが先にピットインするか注目されたが、前方を行く63号車に優先権が与えられ、41周目にピットイン。根本はこの間にオーバーカットを狙うべく猛チャージの末、翌周ピットインを実施した。

 チーム、実況陣そしてファンの全員が根本のピットアウトに注目したが、根本は無事オーバーカットを成功させ、63号車を駆るバッシュ選手の前でコースへ復帰することに成功する。しかし既に温まったタイヤを履き、最後のチャンスとばかりに果敢にアタックを仕掛けてくるバッシュ選手を従えた根本。ここは冷静な走りで第1シケイン、第2シケインを通過すると、第2シケインで縁石を大きく乗り上げてしまったバッシュ選手にギアボックス関連のトラブルが発生。残念ながら63号車はここでリタイヤとなってしまい、車両回収のために三度目のセーフティーカーが導入されることとなった。

 圧倒的なストレートスピードを誇る55号車が真後ろに控える状況でのリスタートとなり、1コーナーまでのオーバーテイクされてしまう懸念があったが、リスタート時にウィービングを使った技で凌いでみせた根本。しかしすぐに第2シケインで別のクラッシュが発生してしまったことで再びセーフティーカー先導となってしまった。

 51周目、残り時間7分20秒でレースが再開されると、ここでも抜群の加速を見せた根本はすぐに後方を走る55号車と約1.5秒のギャップを構築。その後は63号車にトラブルが発生したということも考慮し、リスク管理をしつつプッシュし過ぎない走りに切り替え、チェッカーフラッグまで無事にマシンを運びきった。

 これにより根本/リベラティ組は最終戦プロクラス優勝、そして2022年のイタリアGTエンデュランスカップのタイトルを獲得した。根本にとっては2020年のイタリアGTスプリントでのタイトル獲得に続いて欧州GTで2度目の選手権制覇となった。ランボルギーニ・スクアドラ・コルセのファクトリードライバー昇格という目標に向け、ジョルジオ・サンナ氏から課せられた仕事をしっかり遂行して見せた。

◆Campionato Italiano GT Endurance – Monza round 4 – Gara


◆【CIGT】イタリアGTエンデュランスカップ 第4戦 モンツァ 決勝 【公認】ミラーライブ配信!!

■根本悠生 コメント

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「今シーズン共に戦ってきたベレッタ選手の不在、予選後のリベラティ選手の腰痛、そしてレース直前の雨など、数々の不運に見舞われた週末でした。そんな中でも、日頃から意識している“与えられた環境の中でベストを尽くす”というスタンスを貫き、最終的に優勝することができてとても嬉しく思います。最初のスティントでリベラティ選手がトップから30秒遅れてしまった時はさすがの自分も焦りましたが、焦ることなく自分の仕事に集中することができました」

「ファクトリードライバー昇格を目指す中で、今シーズンのイタリアGTはランボルギーニ社からのサポートを得て参戦していることもあり、タイトル獲得が至上命令という重圧を感じながら一年間戦ってきました。開幕戦ペルグサでのトラブルはあったものの、最終的に2回のポールポジション、4戦中3戦でのファステストラップ獲得、優勝2回、2位1回という結果で、速さと強さをしっかりジョルジオ・サンナ氏にアピールすることができたのではないかと思います」

「今シーズン根本悠生を応援して下さったスポンサー様、ファンの皆様。本当にありがとうございました。イタリアGTチャンピオン獲得という結果を皆様にご報告できることをとても嬉しく思います。来年以降も引き続き、国内外で活躍するGTドライバーとして更に上を目指し、日本人初の欧州自動車メーカーのファクトリードライバーという夢に向かって全力で戦ってまいります。2023シーズンも根本悠生を何卒宜しくお願い致します」

Photo by Fotospeedy

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日:https://www.yukinemoto.com/report_/pdf/BDL-PR-221010.pdf
英:https://www.yukinemoto.com/en/report/pdf/221010-VSR-CIGTE-Rd4.pdf
LSC:https://www.yukinemoto.com/en/report/pdf/221010-LSC-CIGTE-Rd4.pdf

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